非効率銀行宣言


「非効率銀行宣言 面倒くさいことを引き受けます」

 

そんなことを宣言する銀行は現れてこないものでしょうか?
2017年2月8日付で江崎禎英氏(経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課長)が「効率化、やめませんか?」というタイトルで日経デジタルヘルスに投稿しているのをみてふと感じたことです。

 

日経デジタルヘルス座談会「情報化が切り拓く、ソーシャルホスピタル実現への処方箋」<第1回>効率化、やめませんか?

 

氏が指摘していることは、かつて厳しい状況でも陸軍と海軍が連携しなかった硫黄島の戦いにあったように、全体をみることをせずに個別に効率化をしていくことの弊害です。そして介護の問題は介護の中で、医療の問題は医療の中で効率化をしようすることの限界を指摘します。
ある部分の効率化が社会全体への不最適をもたらすことはたくさんあります。社会はシステム、つまり互いに影響を与え合う要素の集合であると捕らえるとすれば、ある部分の効率化を目的としてPDCAをまわし始めると、その外にある広い世界に対しての視野狭窄をもたらします。

 
金融の世界も同じようなことが起きます。

たとえば、最近はどこの銀行でも始めている、「来店不要、即日融資」をうたい文句とするローンは本当に利用者に幸福をもたらしているといえるでしょうか? 「来店不要、即日融資」はたしかに、銀行にとっても利用者にとっても効率化を追求したサービスです。しかし、本当はこのような利用者に必要なのは、手間をかけてでも時間をとって相談にのってくれる相手ですよね。

多くの場合がそうであるようにおカネの問題は、その外にある社会とそのヒトの関係性の問題です(企業の場合も同じです)。銀行も利用者も「おカネ」の問題に限定して効率化を追求すると、意図せずこういう多重債務者を増加させていく構造を業界として作り出してしまうのです。(意図していたらもっと怖いですが)

 

カナダに、VANCITY CREDIT UNIONという低所得層にローンを提供する協同組織金融機関があります。彼らのミッションは、ローンを行うと同時に利用者を多重債務のサイクルから脱却させることです。具体的には利用者の住宅や就業などの課題に対して地域と協力して支援をし、信用力を改善させる方向に向かわせることです。いわば、きわめて非効率なオペレーションを行っているのです。この銀行は世界の社会的課題を解決する金融機関のネットワーク Global Alliance for Banking on Values にも加盟しています。(ちなみに世界の36の金融機関がこの組織に加盟していますが、日本にはひとつも加盟しているところがありません)。

 

現在、日本再興戦略にそって国をあげてサービス業の生産性改善に取り組もうとしています。その方向性が業界やテクノロジーの狭い部分のなかで視野狭窄にならないことを願うばかりです。