5分でわかる「バリューチェーンファイナンス」

ずっと「バリューチェーンファイナンス」という言葉を、腑に落ちるように説明するにはどうすればよいだろうかと悩んでいた。

執筆した「バリューチェーンファイナンス」という書籍では、

・Value~顧客が付加価値を生む構造を見える化し

・Chain~その価値が形創られるつながりにともに関わることで

・Finance~顧客と金融機関がともに成長を支えあう金融手法

というふうに定義している。「顧客と銀行を一体として考えることだよ」という説明を行うときもあるが、どうもすっきり説明ができている感じがしない。「リレーションシップバンキング」とはどう違うの?ということもうまく説明できないときが多い。

 

最近、「バリューチェーンファイナンス」を図示して伝える方法をふと思いついた。

決して論理的ではなく、概念的な説明となるかもしれないが「バリューチェーンファイナンス」を創りだした意図のようなところを伝えられるかもしれないと思ったので紹介する。

ポイントは、「顧客と銀行の関係をどのように捉えるか」というところである。

 

■従来の金融ビジネスモデル

 

 

通常、銀行員は顧客と銀行は、切り離された存在としてとらえている。図にするとこんな感じだ。

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銀行は顧客を自分とは切り離された存在としてとらえている。そして、切り離した対象である顧客に対してサービスの提供と収益を得る機会をコントロールしようとしてビジネスモデルを設計する。たとえば、リスク管理という業務は顧客に帰属するリスクを自分とは切り離して評価するものだ。対象がサービスの提供先が収益機会の対象として不適切であるととらえた場合は、その提供先をポートフォリオ管理と称して顧客セグメントや地域戦略をコントロールしようとする。

 

■リレーションシップバンキング

 

ところが、バブルが崩壊し成長経済の限界が見えたときに日本の銀行はその顧客のポートフォリオそのものをコントロールすることが難しくなってきた。そして今度は、銀行は顧客を変えずに内に取りこんでコントロールしようとした。2000年代に適用が進んだリレーションシップバンキング(リレバン)というビジネスモデルは、銀行の関係性に焦点をあてている。顧客は銀行の収益を構成する部分であるため、銀行が収益をあげるためには、顧客が収益をあげなくてはいけない。その顧客を選択することができないから、顧客の実態を把握し、ときには成長のために必要な支援をしなくてはならないという視点にたった。つまり、顧客は銀行の一部分となる。顧客は銀行の収益を構成する要素としての部分として、同心円の内側に顧客が存在している。

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しかし、顧客は、銀行にコントロールされたいと思っていなかった。顧客側のほうがビジネスモデルの複雑化が進んでいったからだ。銀行がコントロールしようとすればするほど、顧客はコントロールできない対象となっていった。そのなかで多くの顧客は徐々に銀行に期待をしないようになっていった。

 

■バリューチェーンファイナンス

 

「バリューチェーンファイナンス」は、ビジネスモデルとしてのリレバンの限界に向き合った結果、この同心円の入れ子関係を逆転させた概念である。つまり、「銀行」は顧客の部分である」というとらえかたをする。銀行(Finance)は、顧客である事業者や生活者に対する価値をもたらすために(Value)、その生態系のつながりに貢献する機能(chain)として存在している。これこそが、金融機関が地域や社会に存在する理由であるととらえる。多くの銀行員にとっては、自分自身である銀行が顧客の”部分”としてとらえるということに違和感がともなう。しかし、この視点の転換こそがバリューチェーンファイナンスをあらわしている本質である。

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このとき、銀行の視点は銀行のなかだけにはない。銀行の視点は顧客と銀行が一体化した全体のなかにも存在している。銀行員である「あなた」は部分であると同時に生態系を構成する全体でもある。そして「銀行にとって顧客とは他者である〝誰か〟ではなく、自分が部分を構成する〝われわれ〟である」という銀行のありかたにたどりつく。この意識の転換によって銀行のビジネスモデルを変容させていくこと。これが「バリューチェーンファイナンス」のコンセプトがもたらすパラダイムシフトである。